【平成18年7月豪雨災害岡谷市における土石流災害の地形・地質的な要因】

伊那谷の地形・地質に詳しい村松 武さん(飯田市美術博物館)に聞きました

平成18年7月豪雨では、上伊那から諏訪にかけての広い範囲で土石流や崖崩れが発生しました。 ここでは岡谷市で大きな災害を引き起こした土石流災害に絞って、その地形・地質的な要因を振り返ってみます。

▲位置図・航空写真ともに【天竜川シンポジウム 平成18年7月豪雨から10年】パネルより改変して引用。

1.集落の立地と地形
災害が発生した場所は、丘陵地から流れる小さな河川が天竜川や諏訪湖に面した平地にでたところです。 ここは周囲より高くなっていて、水はけが良く住みやすいため、集落ができやすい場所です。 しかしこの高まりは、土石流で運ばれてきた土砂や岩石が堆積したところ(扇状地)です。 つまり過去の“災害”の痕跡なのです。 ふだんは、わずかな水の流れでも、数十年~数百年に一度の大雨の時には大量の水や土砂が押し寄せてくることを想定しなければなりません。

写真1 土石流の流れた跡(岡谷市小田井沢川)

2.風化した火山岩と表土
岡谷市の土石流は、いずれも200万年くらい前の火山岩地帯で発生しました。 風化した火山岩の上には、火山灰や砂礫からなる表土が厚く覆っていました。 ふだん雨が降ると水は表土でいったん吸収され、時間をかけてゆっくり移動して沢筋にしみ出ていきます。 ところが平成18年の豪雨では表土にしみ込む水量が多すぎたため、水を通さない風化火山岩との境でパイプ状の水の流れが生じ、周囲の表土を崩しながら勢いよく地表に噴出したと考えられています。 そのため、大量の水と土が一気にながれて泥水のような土石流が発生し、途中で立木を巻き込んだり川底を侵食したりして規模が大きくなって集落を襲ったのです。

写真2 土石流の発生源(岡谷市志平川源流)と現場見学会の参加者

【注】 写真1・2は伊那谷自然友の会主催の現地見学会「平成18年7月豪雨の現場を歩く③」において小泉明裕氏(飯田市美術博物館)が撮影(H19年6月23日)

3.避難する心構え
私たちはこのような自然の振る舞いにどのように対処すべきでしょうか? 丘陵地から流れる河川は身近なところに無数にあります。 土石流の発生しやすさやタイプに違いがあっても、許容量以上の大雨が降れば、土石流は発生します。 私たちは日ごろから川の流れや流域の状態に関心をもち、いつもと異なった雨の降り方や川の様子を感じた時には、いつでも避難できるよう準備しておく必要があります。

次回⑤の最終回では、この災害から学ぶべき教訓を紹介します