【水害を引き起こす線状降水帯とは?】


図1 平成18年7月豪雨時の降水量と天竜川流量(平成18年7月17日~19日)
降水量データは気象庁(辰野・伊那)と執筆者の観測データ(飯田市嶋)
流量データは国土交通省「水文水質データベース」から引用して作成した


図2 平成18年7月19日の降雨状況
「平成18年7月17~19日(平成18年7月豪雨に伴う出水)天竜川水系(長野県内)の出水状況」天竜川上流河川事務所(平成18年8月10日)から引用

伊那谷の気象に詳しい今村理則さん(元かわらんべスタッフ)に聞きました
伊那谷では、大洪水のことをオオミズ(大水)と呼んでいます。「平成18年7月豪雨」と命名されたオオミズはなんであったのか。最近になって耳にするようになった線状降水帯とどうかかわっているのか考えてみます。
■豪雨が洪水につながる
天竜川流域が被害を受けたのは平成18年7月豪雨の前半部で15日~21日の間です。24時間雨量の過去最大を更新した辰野と伊那に加えて、参考のために「かわらんべ」に近い飯田市嶋の記録も加えました(図1上)。辰野は19日の10時20分までの24時間で246mmに、伊那は10時に232mmとなって、いずれも観測史上第一位の記録になっています。72時間雨量でも辰野と伊那は観測史上の記録を更新しました。辰野や伊那では大雨が断続的に降っていたことになります。
こうした雨を受けて天竜川の流量の変化が図1下です。降雨の様子に流量変化が対応していることがよく分かります。伊那のピークは19日6時で1136 m3/sですが、6時間をかけて「かわらんべ」近くの時又まで下ると3510 m3/sと3倍以上になっています。
■最近よく耳にする【線状降水帯】とは?
【線状降水帯】という言葉が頻繁に使われるようになったのは比較的新しく、平成26年8月の広島県での豪雨以降といわれています。現時点では厳密な定義はありませんが、「線状の降水域が数時間にわたってほぼ同じ場所に停滞することで大雨をもたらすもの」といえそうです。詳しく特徴を示すと ①幅20~50km、長さ50~300kmの線状ないし帯状の降水帯があり ②最大時間雨量が20mmを越える強い雨で、③2時間以上降り続く雨である、と整理できます。
図2は平成18年7月19日の雨量強度の分布で、強い雨を示す赤色~黄色が上伊那から諏訪地域に帯になっています。強い雨は確実に2時間以上降り続いていることから、線状降水帯が形成されたと考えることができます。
■伊那谷でも発生します
線状降水帯が形成されるのは ①強い暖湿気の流入 ②その気塊を上昇させる地形 ③地上10~110kmの中層に寒気が流入することなどが条件になっています。具体的には ①低気圧の中心付近 ②寒冷前線上 ③梅雨前線・秋雨前線あるいはその南側100~200km ④台風が挙げられています。伊那谷は南~南西風が入り易く、中部山岳で上昇する条件は揃っています。
伊那谷の近隣で発生した線状降水帯として、平成26年7月の木曽での事例が記憶に新しいですが、伊那谷でも発生が考えられる最近の事例の一つが平成11年6月30日です。この時に辰野・伊那では当時の観測史上第一位の雨量を記録した豪雨でした。 (その後、平成18年7月豪雨が更新)当時は線状降水帯の呼び名はありませんでしたが、データを詳しく見ればその可能性を指摘できると思います。

次回は飯田市美術博物館の村松学芸員による地質についての解説です