名勝天龍峡の玄関口に位置する姑射橋は、景観に溶け込んだ たたずまいが魅力の地域の重要な観光資源です。かわらんべ講座では、写真講座、ウォーキング、昆虫採集等でなじみの深い場所ですが、実は今から68年前、劇的なチョウの新種発見の舞台となったことで昆虫研究者・愛好者にはとても有名で、学術的にも貴重な産地なのです。本種発見の物語を、姑射橋近くに住む「ムシ博士」四方学芸員に紹介していただきました。


初夏の朝霧に包まれた姑射橋から天龍峡の眺め

昭和20年6月28日早朝、天龍峡駅から龍江に向かって一人の男が姑射橋を渡っていた。朝霧が川面を覆い陽はまだ射してはいない。男が橋を渡りきろうとしたとき、目をやった先の欄干上に数匹の小さな蝶を見つけた。農林省の研究者であった男:湯浅啓温氏は、見慣れないこの蝶に興味をいだき素手で数匹を捕まえた。
標本は後に九州大学に送られ、白水隆先生によって新種の蝶「クロミドリシジミ」として発表された。天龍峡ラベルの付いた標本は、現在も九州大学の収蔵庫で大切に保管されている。

写真と文:四方圭一郎(飯田市美術博物館)
※広報誌かわらんべ第135号(2014年)に掲載