真夏の昼下がり、木々は黒いほどに濃く葉を茂らせ、葉先を揺らすはずの風さえ吹くのを忘れてしまったかのようです。時間は遅々と流れ、アブラゼミの声だけが無遠慮に私の鼓膜に突き刺さってきます。この停滞した時間を断ち切るように、ケヤキの梢を一匹の大きな昆虫が飛ぶのを見つけました。枝先をたどるように飛ぶその虫は、強烈な夏の陽射しをはね返して一瞬ギラリと輝き、次の瞬間、金緑色の光沢が宝石のように青空の中で瞬いたのでした。天龍峡にかかる姑射橋の上から、周囲の木々の枝先を眺めてみて下さい。ケヤキやエノキの梢を飛ぶ宝石のような虫に出会えるかもしれません。その虫の名はタマムシといいます。

(飯田市美術博物館 四方 圭一郎)