連載④ 水質浄化で増えてきた生き物<キタガミトビケラ>

以前紹介したカワゲラとアミカの調査していると同時に他の川虫もたくさんとれます。その中には渓流を主な生息場所としている種類も含まれていました。その種類とは・・・

ユニークなトビケラ【キタガミトビケラ】

伊那谷では、主に山の中の川(流れが速く水の冷たい渓流)に生息し、幼虫はほぼ年中見られ、春~夏ごろに成虫に羽化します。巣もエサのとり方もユニークなトビケラで、幼虫は、巣から伸ばした柄を石に固定し、流れの中に「宙づり」になって、巣から広げた足でエサの水生昆虫をキャッチして食べます。
和名の「キタガミ」とは、アミカの研究者の北上四郎にちなんで名付けられたものです。

この渓流性の種類も急激に増えました

以前に本誌で紹介したカワゲラやアミカの調査をしていると同時に採集されることが何度かありました。
松川町の天竜川では、流れの速い瀬の大きな石をひっくり返すと、石の下の面には小さな巣がいくつか付いていて、おどろいたことに、巣を柄の跡もいくつも残っていました。
このことから、偶然見つかったのではなく、すでに生息の場として利用が進んでいることが予想されました。
天竜川での分布の広がりや、生息量の多さについては調査していませんが、今後、天竜川で出会うことが多くなりそうな種類の一つと考えられます。

※水質を指標する種ではありませんが、指標生物や日本版平均スコア法にも掲載されていない種類ですが、かつて水質判定で用いられた「御勢が提唱した生物学的指数値」では、きれいな水を示す値とその信頼性には最高値が設定されています。

川虫全体にも変化がありました【カゲロウの増加で本来の数のバランスに戻った?】

上記の調査で冬~早春の天竜川で川虫をとっていて気づいたことがあります。それは、カゲロウの仲間の匹数がやけに多いことです。これは上伊那も下伊那も関係なく天竜川の広い範囲で共通していました。特に多く感じたのはヒラタカゲロウの仲間とマダラカゲロウの仲間です。カワゲラを詳しく調査した21年前には、こんなに多くはありませんでした。
とは言え、カゲロウが多くなったことに心配することはありません。カゲロウが多いことは天竜川のような川では普通のことです。

代わりに少なくなったと感じる虫もありました。それは、現在の「ざざ虫」:ヒゲナガカワトビケラです。以前はものすごく多く生息していたこの虫も、今では“自然のバランス調整”によって適正な生息量に落ち着いてきたのかもしれません。

広報誌かわらんべ第187号(2018年6月号)に掲載