連載③ 水質浄化で増えてきた生き物<アミカ>

本誌8月号や「伊那谷の自然」192号で紹介したアミカという水中の生き物。たぶん知らない人がほとんどだと思いますが、この小さな生物が大事な情報を教えてくれました。

ヒメナミアミカの幼虫(右)とサナギ(左):高森町市田の天竜川で撮影

アミカは山地渓流の生き物

水生昆虫のアミカはハエや蚊(カ)などと同じ仲間です。卵から蛹までを水中ですごし、多くの種類が冷たい水と速い流れを好むことから、主に山の中を流れる川(山地渓流)に生息しています。
日本では20数種のアミカが見つかっていますが、未記載の種類(今後、新種となるもの)も存在し、世界中と見比べても日本はアミカの多い国です。伊那谷では天竜川の支川に様々な種類がすんでいます。

天竜川の過去の記録に登場しない

天竜川の生き物のことを詳しく調べている「河川水辺の国勢調査」※では、過去にアミカが2回確認されています。しかし、その数は少なく、どうやら偶発的な記録のようです。また、他の調査記録を見ても本川でアミカが確認されたという情報はほとんどありません。本来、渓流にいるアミカが天竜川のような大河川で見つからなくても、それは当たり前のことです。そのため、これまで誰もアミカの生息場所として天竜川を見ていませんでした。

※河川水辺の国勢調査(かせんみずべのこくせいちょうさ)  国土交通省が全国の直轄河川の生物種や生息環境の把握を目的に、平成2年度から実施している統一手法による生物調査です。伊那谷天竜川では、平成5,9,14,19,24年度と今年度に、水生昆虫を含む底生動物調査が行われています。

しかし、可能性はあった

夏の市民参加の生物調査イベント「天竜川上流水生生物調査」によると、虻川(豊丘村)の最下流では2002年からアミカの記録があります。この情報から、アミカは天竜川のすぐ近くにまで分布を広げていたことが解ります。天竜川の生息環境が整えば生息できる可能性はありました。

16年前に支川虻川(豊丘村)の最下流部で確認されたアミカの蛹(2002年8月5日)

 

知らぬ間に急増 広い範囲に分布し数も多くなった

2017年の6月中旬に偶然多数のアミカを見つけました。その時から9月にかけて下伊那の天竜川を調べてみると、いそうな環境ではどこでもアミカが見つかりました。その数も多くて、30cmほどの石に数匹、多い時には20匹ほども付いていました。姿が見られる期間は長く、5月~10月と推定されました。成虫の繁殖も確認でき、来年の生息も期待できそうです。

一つの石の表面に密生するアミカの幼虫と蛹

アミカの生息は水質の改善の姿そのもの

「天竜川にアミカがすめるようになった」。これは諏訪湖・天竜川の水質浄化対策の歴史の中で大きな出来事です。これからも、水中のこの小さな生き物に注目です。

【アミカは良好な水質を示す最も優れた生き物】「きれいな水」の指標生物であり、最新の「日本版平均スコア法」でもアミカの仲間は全ての種類が水質の良いことを示すスコア値10(最高値)が設定されています。

※ ここに記載したアミカの生息情報のうち、「河川水辺の国勢調査」と「天竜川上流部水生生物調査」については「天竜川上流河川事務所」に情報提供いただきました。2017年のアミカの生息記録については広報担当が調査したデータです。

広報誌かわらんべ第184号(2018年3月号)に掲載