広報誌かわらんべ第195号に掲載

■第24回 川べりの崖に育つわさび(南箕輪村・伊那市)

伊那市付近の天竜川のすぐ西側には、崖のような段丘崖が続いていて、その林は「緑の帯」のようです。春、崖の中程の林床の一部が緑濃くなります。その緑の正体はワサビ田でした。崖からしみ出てきた湧き水がワサビを育んでいました。

現地取材:2017年4月24日

この周辺は段丘崖(だんきゅうがい)からの湧き水が豊富です。その湧き水は昔から飲料・かんがい・栽培・水産養殖などに利用され、地域の生活に不可欠な存在です。

伊那市西春近の段丘崖のワサビ田

崖からの湧き水利用で ひときわ特徴的なのがワサビの栽培です。南箕輪村の段丘崖では昭和初期にワサビ栽培が始まり、今では立派なワサビ田が広がる流域一の産地です。穂高の平地のワサビ田と異なり、斜面の利用が見事です。
ワサビ田は天竜川の川べりの崖に沿って点在し、広さも様々で、整備された栽培地から天然生育地のような姿まで様相も様々です。

最盛期の頃の南箕輪村のワサビ田(昭和36年) 写真出典:上伊那郡誌自然編

4月下旬、ワサビの花が咲く頃、伊那市西春近の段丘崖を訪れると、鮮やかな緑の丸い葉をたくさん広げたワサビが湧き水の沢筋をおおっていました。茎の先端にはアブラナ科特有の可憐な白い花が咲き、淡い香りが辺りを包んでいました。
周囲の木々が葉を繁らせる前、段丘崖の湧水とワサビは、天竜川の川べり風景に独特な景観を演出します。ここに育つワサビは地元の方が大切に育てています。可憐な白い花をいつまでも楽しめるよう、側で見守るだけにしておきましょう。