広報誌かわらんべ 196号掲載分

■ざざ虫漁 伝承の取り組み

伊那谷天竜川だけの独自文化【ざざ虫】は、今、漁の担い手不足の危機に直面しています。「世界に誇れる伝統食を後世に残したい」関係者が一丸となって地域の若手への伝承の取り組みが始まりました。1月26日、真冬の伊那市天竜川に上伊那農業高校の学生7名を迎え、上伊那地域振興局企画振興課の主催、天竜川漁業協同組合の共催で実施された「ざざ虫漁体験」の活動を紹介します。(現地取材:2019年1月26日)

会場に詰めかけた取材陣の数に、この取り組みへの周囲の関心の高さを伺い知ることができました。体験に参加した高校生の中には7/12の水生生物調査<本誌8月号掲載>を体験いただいた学生さんの姿もありました。

ざざ虫漁体験(虫踏み)

ざざ虫のこと、漁具のこと、とり方を漁師さんから教えてもらい、実際に虫踏み漁を体験しました。高校生は笑顔で網を構えクワでかき回していましたが「大変!やっている人スゴイ」と、漁が簡単でないことも知ったようです。

【ざざ虫漁】 川底の石の間にすむ川虫を、クワや足で川底をかき回し、四つ手網に受けてとる方法。とった虫は選別器で必要な川虫だけを集める。上伊那の天竜川で12月~2月に行われ、漁には天竜川漁業協同組合の許可が必要。

ざざ虫漁を教えてくれた三人の漁師さん

高校生の漁体験

報道や研究者のみなさん向けのレクチャーも同時に行われました。

ざざ虫佃煮の実食体験

漁師さん自家製の佃煮を食べてみての高校生の感想は「オイシイです!」「エビの味がする」「マゴタいただきます!」見た目はチョットと言いつつも、大型で厳ついマゴタ(ヘビトンボ)がオイシイという人もあり、味に姿カタチは関係なさそうです。

ざざ虫の佃煮:漁師さん自家製 主原料はヒゲナガカワトビケラ

漁獲の分類調査

今回のイベントの発案者である牧田豊さんが20年前に実施した内容物分類。今回20年振りの調査を高校生が体験しました。主な種類の個体数と重量を集計してみて、ヒゲナガカワトビケラが多い様子に変わりはないとのことでした。「今後も授業の一環などでこの研究を続けてほしい」と牧田さん。漁の対象の生き物を深く知ることも大事なことです。

本家「ざざ虫」のカワゲラも結構いました。水がきれいになってきた証拠です

体験した高校生たち

「良い経験・貴重な経験になった。漁のプロとやるとすごい量がとれた。分類も楽しかった。初めてだけどしっかり解った。漁の歴史や方法も学べた。また参加したい。」など、高校生たちの言葉からは、漁師さんの熱意が伝わったことが解ります。引率の先生によると、高校には伊那谷の地域資源を広く学び、郷土食文化等の活用の探求を専攻するGLコースも新設され、今回の体験も、その中で活かされるようです。

独自文化の伝承の願い

主催者の上伊那地域振興局企画振興課から、地域独自の昆虫食文化のシンポジウムや実食イベントなど、地域の内外に広く発信する今後の取り組みが紹介されました。共催者の天竜川漁協からは、今季の虫踏許可証の発行が10人程にとどまる現状が紹介され、体験した学生には、将来組合員として漁への参加を望む声がありました。講師を務めた3人の漁師さんからは、世界に一つの文化。漁の跡継ぎにこの文化を守ってもらいたい。一人でも多くの若い人がやってくれたら嬉しいと語っていました。